澤木興道(港区)

設置場所:東京都港区高輪2-11-1 泉岳寺本堂前
原型制作:鏡恒夫(1935-)、鋳造:浅草翠雲堂
寄贈者:石井市三郎
設置時期:1989年3月
画像提供:飯坂陽治さん
林久治⇒銅像探索記/f

設置経緯:澤木興道老師(1880-1965)は津市の生まれ。仏法の究極である座禅をもって生涯を貫いた二十世紀にもっとも活躍した禅僧の一人です。「座禅像造立趣旨」には以下のように記載されている。
 早年東都に出て商いの道を修行し郷里宇都宮市に洋品店を創業した私は昭和十八年第二次大戦中組合の勤労奉仕に加わり間もなく肺浸潤を患い続いて胃潰瘍心不全を併発して生業と闘病のはざまに長い間苦悩していた。しかし五十三歳の時、長男の大学卒業を機に家業の一切を託して引退し養病に専心することを決意した。
 昭和三十六年偶々桂林寺における知己の法要に列し善知識当寺住職広瀬大道方丈に邂逅して参禅の道を教えられ当寺の参禅会に参加して碩徳澤木興道老師の聲咳に接し従来味い得なかった感激を覚え、茲に始めて正伝の座禅を親しく行ずる栧縁に恵まれた。澤木老師亡き後は、酒井得元老師に聞法する勝縁を得て己に二十余年、従来の自己中心の考えと生き方を一新して虚弱な身ながら八十三歳の今日まで日々是れ好日の心で感謝の毎日を過ごしている。是れ偏に宗祖道元禅師の只管打坐の教えを奉じて朝夕座禅に親しみ、日々奉仕の生活に導かれて来たお陰を信じ、何事にも自己の身勝手な期待を捨て自身の全てを佛にお任せして専一に座佛を行ずることが安楽の法門であり生命の安らぎ生活の憩いであると心に銘じている。
 私の病の根源であったエゴによる迷いを知らしめ私の心を他の一切に向わしめた正信の座禅をより多くの人々に勧めたい思うこの切なる念願黙し難く、桂林寺に次いで私が嘗て商いの修業に勤しんだ東京の地に結縁を得て此處泉岳寺の浄域に正身端座の座禅像を奉納する次第である。
 維時平成元年三月春彼岸會 施主 石井市三郎 合掌

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